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アカギや麻雀ネタなど
2024 . 04
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    年越す前にアカギ三世代のSSを一丁。
    三人の違いを見いだすのが楽しかったです。
    しげるは生き甲斐見つけてギラギラしてて、アカギはぬるい現状に嫌気さしてヤケになってたりで、赤木は他者の事を気にかける余裕綽々のおっさんって感じ。
    こうやって見ると実に人間くさいなーと思った。

    個人的に19歳アカギにはハチクロの森田さんと同じ臭いを感じる。
    才能積み込みオーバーなトラックで暴走して回りを巻き込んだ挙げ句、突然電池が切れたようにパタンと倒れて爆睡。もちろんそのポケットには札束がぎっしり入っているという感じだ。
    そんな感じのパラレルなんで、稚拙文章に耐えられる方はどうぞ。
    ちょっと推敲。
    エアポケット

    骨の髄まで凍り付く様な、寒風を受け白髪の中年が僅かに身を震わせた。
    時間帯はまだ薄暗い早朝。
    コートのポケットに手を突っ込むと指先に触れたのは金属の冷たい感触。
    左手で胸ポケットのマルボロの箱を取りだし、右手でジッポライターを持ち、くわえた煙草にそっと火を付けた。
    こんな小さな火では暖も取れないが、目的の場所まであと僅か。
    着いたら水割りで体を温めようかと思案している時、鼻先に白と黒の小柄の人影が見えた。
    土埃と赤黒い血で汚れた学生服という出で立ちの鋭い目つきがじろりと赤木を見つめていた。
    「ようしげる。また午前様か」
    背の低い白髪が一文字に引き結んだ口元を歪ませた。
    「アンタこそ、人の事は言えないぜ」
    「こんな寒空の下で喧嘩か。若いねえ」
    「ぬかせ」

    軽口を叩きながら白髪の二人は古びたアパートの階段を登り、203号と書かれた表札のドアから部屋に踏み行った。
    玄関のこじんまりとした上がりかまちには、白い革靴一足、泥にまみれた小さな靴一足、それともう一つ、白い履きつぶしたスニーカー一足の合計三足が並べられた。
    決して広いとは言えない1DKのこの部屋に存在するものは小さな冷蔵庫と、四角のちゃぶ台が一卓。
    それに畳の上に横に転がっている白髪の長身の体。
    「ったく。寝るんなら布団敷いて寝ろってのに。」
    苦笑いをしながら赤木は脱いだコートをハンガーに掛け、壁のフックに引っかけた。

    しげるは死んだように眠っている青年をじっと眺め、足で軽く頭を小突いた。
    何の反応も無い事にほくそ笑むと、ベルトに仕込んでおいたリボルバーを無造作に取り出し横たわる白髪に銃口を突きつけた。
    「無防備もいい所じゃない。この場で撃ち込まれても文句はねえだろ。」
    「おいおい、仕事で疲れてんだろうからそっとしておいてやれよ。」
    この異様な行動を涼しい目で見ながら赤木は、冷蔵庫から取り出した氷とウィスキーをグラスに流し入れ、水割りを作る作業を進めてた。
    「仕事ねえ…」
    昏々と眠りを貪る青年は上下の青い作業服を着込んでいて、仕事帰りである事を物語っていたが、ズボンの尻ポケットに無造作に突っ込まれた一万円の札束が工員という身分に不似合いさを強烈に臭わせていた。
    「月一万二千円の仕事だろ。ロクでもない見返りしか得られないのに、何でそんな事するんだろうね。本気を出せば一晩で何倍もの金を得られるのに。」
    「まあそう言うなよ。そのロクでもない見返りで凌いでいるヤツはごまんといる。」
    赤木は水割りグラスを片手に、少年の対面に位置するちゃぶ台のそばに腰を下ろし、足をだらりとくつろがせた。
    「そういう奴らはまともで、一晩で千万単位の金を稼げる俺らの方が異常なんだよ。」
    そっとしておいてやれと言ったその口で、ちゃぶ台の下で伸ばした足の親指で器用に青年の腹のあたりをくすぐった。
    寝ている時ですらその能面の様な表情を崩さない青年をつまらなさそうに見返し、しげるは青年に向けていた矛先を赤木に合わせるが、こちらも全く動じたそぶりは見せない。
    「こいつは割に合わない報酬の事なんかどうだっていいんだよ。
    息継ぎする場所が欲しいんだろ。平凡に地道にまっとうな奴と関わり合う、そんな場所が。」
    銃口の向こうに見える幼い少年は、その言葉を受けて綺麗に並んだ歯を覗かせ年不相応な不気味な笑みをたたえた。
    「ククク…平凡、地道、まとも。天才だの神域だの言われてるくせに、手に入らない物があるなんて笑えるね。
    何もかもを見通せるくせに、てめえの命なんかどうだっていいって本気で思ってるから始末が悪い。まともに生活している奴から見れば馬鹿にしている様にしか見えねえから、理解されるはずもない。」
    ナイフの様な鋭く冷たい視線を浴びながら、赤木は目尻を細めて水割りを一口分喉に流し込んだ。
    「しげる、お前は今、楽しいだろ?」
    「?」
    「目の前の壁をぶっ壊す術を手に入れて楽しくて仕方が無いんだろう?」
    「………」
    「今そこで寝っ転がってるそいつも体当たりで壁を壊す事を楽しんでいる。だが、何個も休み無くぶっ壊し続ければしんどいのさ。
    いかに場を上手く切り抜けられても肉体的にも、精神的にも完全に無傷って訳にはいかねえし、勝負に挑む度にダメージは蓄積される一方だ。ククク…
    お前ならどうする?」
    憮然としたポーカーフェイスで「俺は進む。」ときっぱり答えたものの、具体的な解決法を紡げないという事で眼前の初老の男を論破出来ぬ事実がしげるの胸にのし掛かった。
    「例えばだ、お前が今その銃を撃って暴発したとする。随分と間抜けで無意味な死だと思わねえか?」
    明日であろうと数十年後であろうと人間はいつか必ず死ぬ。そんな当たり前の事なのに、その死に意味を見いだす事自体が馬鹿げている!
    それはしげるが胸の真ん中で掲げている哲学で、揺るがぬ真理だと信じているものだ。
    「間抜けで無意味な死…ギャンブルをやり続ける限りは、アンタも俺もそれに向かって行ってるんじゃないのか。」
    しげるはリボルバーの激鉄を起こし、片目をつぶって赤木の両目の間にキリキリと標準を合わせた。

    引き金はためらいなく引かれたがカチッと空しい音を立てた。
    間髪入れずまたも激鉄が起こされ、弾層が回る。
    二発目、三発目、四発目…全てからぶりに終わった。

    赤木はその間、すまして水割りをニ・三口飲み下しただけだった。
    「今のお前からは殺意が感じられねえ。弾はハナっから入っちゃいない。そうだろ?」
    悠々とウィスキーとミネラルウォーターをグラスにつぎ足す赤木を「クソジジィ」と罵ってしげるは銃を腹のベルトに収めた。
    「死線の果てにもっとでかい壁があるんだよ。つまんねえ事でくたばるのと、まだ見ぬ怪物相手にゾクゾクするのとどっちがいい?」

    しげるは答えられない。
    ただ目の前の壁を壊す事に夢中になって、見えない未来を考える事すら理解出来ないからだ。

    「それを見るためにちょいとここらで休憩の仕方を覚えなきゃなんねえのさ……なぁアカギ。」
    赤木の伸ばした足がちゃぶ台の下で強く蹴り出されたと同時に、だるそうに青年アカギは目を押し上げた。
    「今…何時だ。」
    ただでさえ鋭いまなじりを更に細く開いたぼんやりとした顔付きでのそのそと起きあがり、胸ポケットから取り出したハイライトに火を付けて、ニコチンを深く肺に吸い込んだ。
    「七時だよ。この狸が。」
    アカギは煙を吐くと同時にあくびをした。
    「ククク…さっきの蹴りは効いたぜ。おかげで眠気が吹っ飛んだ。」
    赤木を鋭く見つめ、脇にいるしげるに目をうつした。
    「久しぶりだな。」
    アカギには決して似合わないどこか優しい笑みに対して、居心地の悪さを感じてしげるはああ、とだけつぶやいた。
    常に大人達を手玉に取り、煙に巻いてきたしげるだったが、赤木とこの青年にはいとも簡単にいなされてしまう。
    一見上から目線のその態度の裏にほのかな優しさがある事を感じ、調子を狂わされるのだ。

    自分に似た顔が三つという異常極まりない不思議な空間。
    赤木、アカギ、しげるの三人は時折何かに引き寄せられる様に、無為にこのアパートを訪れる。
    三人共々、住所不定の根無し草で一つの住処を持つ事は無く、ここも気が向いた時の寝床代わりという認識しか持っていない。
    一応赤木の名義で借りられた部屋であるが、三人はお互いが何者であるのかを知らないにも関わらず、何となく顔を合わせ、同じ屋根の下でくつろぎ、酒を酌み交わしたりと適当な馴れ合いの一時を過ごすのだ。
    他者と深く関わる事をよしとしない三人は、適当な所できりあげてそれぞれ別々の場所へとアパートを後にする。
    例えば今日の様に赤木に説教を吹っ掛けられた時には、しげる、アカギはこの場を撤退せざるを得ない。
    他者の心中を言い当てる事に慣れていても、その逆は誰だって面白くない。
    年を重ねた赤木に若い二人は太刀打ち出来ないのだ。

    「それじゃあ、俺これから仕事だから行くよ」
    「おう、気をつけろよ」
    「俺も出る」
    「ククク…喧嘩すんなよ」
    「またなクソジジィ」

    そっけなく去った若者二人を送り出して、赤木は五本目のマルボロに火をつけた。
    一本を吸い終わったら自分も行かなくてはならない。
    いつ死の淵に飲み込まれるかわからない不条理のギャンブルの世界へ。


    ※お金の価値は昭和30年の相場で、現在の10分の一である。
    ※亜空カン…いや異空間に存在するアパートに迷い込んだといういい加減な設定です。
    ※薄っぺらい説教でサーセンw
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